私が受験勉強を始めると、Aさんからちょくちょく電話がかかってきました。私はAさんに、まったく勉強をやったことがないと言っていたので、勉強を続けることができているのか気になっていたのだと思います。Aさんも、1年目の受験で円形脱毛症が3つもできるほどでしたから相当ストレスがあったに違いありません。
Aさんは多少素行の悪いところがありましたが、多才な能力の持ち主で、高校は県立の特進クラスという頭の良いクラスだったそうです。それだから、たった1年足らずの猛勉強で東京大学の本試験にまでいけたのだと思います。Aさんは、県立の特進クラスを卒業後は、バンドをやりたくて美術大学に入学して中退しているということでした。中退後に私がそうなったように、どんどん思いもよらない方向へ行ってしまったそうです。そして、やっぱりもう一回バンドをやりたいなと思い専門学校に入学してきたという変わった経歴でした。
Aさん:斉藤、勉強はどうだ!
斉藤:○○という問題が意味分かりません。
Aさん:その時は、△△という参考書がいいよ。
という具合に、Aさんは電話のたびに参考書を紹介してくれるのでした。本屋の参考書のコーナーに立ち寄ったことのない私でしたが、そもそも本屋にそんなに行ったことがなかったのですが、本屋に行くたびに、こんな本があるのか、いつか読んでみたいなとか、大学に行ったら読めるのかなとか、いろいろなことを考えるきっかけになりました。
いまだから言えることは、受験勉強中のAさんからの電話はかなりの頻度でかかってくることもあり、正直なところ
「またか面倒だな。お勉強しているのに!」
と思ったこともありました。勉強をしたことのない私は、Aさんが円形脱毛症になったようにかなり切羽詰っていたのです。私は、円形脱毛症にはなりませんでしたが、Aさんからの電話が1~2時間にも及ぶこともありました。死ぬ気でやり抜くという気持ちをもって勉強を始めたのですから、頻繁にかかってくるAさんからの電話にもそう思ってしまったのでした。しかし、このAさんからの電話は、大学に入学してから、とても役に立つ情報が満載だったのです。
つづく
